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きむらの和菓子(書籍のレビュー)

  KANさんがこの世界ではないどこかに出発されてから、KANさんの歌詞集があるということを知った。KANさんのファンでもなんでもなかった私だが、『プロポーズ』という曲はいいなと長年思っていて、LOVEソングなんだけど、歌詞が少し独特だと感じていたので、その解説が読めるなら読みたいと思って、タワーレコード新宿店に在庫があるというタワレコ新宿店のtweetを見たので行ってみたが、なかった(その後また補充されたようだったが)。しかたなく、amazonの定価より少し高くなっていたものを買った。 “しかたなく”というのは「amazonは契約労働者の搾取の問題がある」し、「定価との差額が、別にKANさんをサポートするわけではない」からだ。

 ちょっと話がずれたけど、とにかく年末にその本が届いた。まず思ったことは、どこにどの歌詞があるか分からない。 目次自体も見つけにくい。さらに、アルバム別とか年代別とかあいうえお順とかではないので、曲が並んでいる順番に規則があるのかどうかも分からない。...と「ないないづくし」の読者泣かせな書籍なのである。もしかしたら、私が一見さんだからかも知れないが。(ここまで読んで、否定的なレビューだと決めつけないで、最後まで読んでね❤)

 普段、なかなか歌詞を読むということもしないのと、KANさんについては、まだまだ知らない曲の方が多いので、曲を聴く前に歌詞を読むというのはどんなものか、ちょっと新鮮な気もした。とはいえ、『プロポーズ』の歌詞は諳んじることができるので、 この曲については歌詞ではなくて「本人による曲の解説」を読みたかった。

 ところが、なかなかそれが見つけられない!始めの方に出てくる目次には『プロポーズ』がなく、焦る。もしかして載っていない?そういや歌詞集であるということ以外、何曲載っているのか、全曲載っているのか、全ての解説があるのかすら分かっていない。

  幸い、すぐに『プロポーズ』のページは見つかった。解説らしいものも読めた。ふーん、そうなのか!(ネタバレになるので言及しないでおきます❤)

 この仕様(曲の順番、章分けの意図が明記されていないこと、また、章によって解説記載のデザインが一様でないことなど)はわざとなのだろう。こんなのおそらく長年のファンでも迷宮入りすると思う。わざとなのだ。だってその方が楽しいもん。どこに載っているのかも、解説がどれくらい詳細かも、曲によって違うから、辞書的に使うなら(索引がないので、辞書にはならないけど!)、その都度ドキドキを楽しめる(かも)。

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 曲を知っていて歌詞として読む場合と、曲を知らないで詩を読む場合で、こんな違いがあるとは思っていなかった。曲を知らずに読んでいるうちは、言葉だけがそこにある。人と話す時、相手の言葉を理解しようと耳を傾けるように、詩を構成している言葉の一つ一つの意味を汲み取ろうとする。楽しい詩だと軽く読める。悲しい詩だと、その当時のKANさんのことが心配になるし、英語の詩だと漠然としていてよく分からない。そして、KANさん特有のちょっとオトナな詩(オブラートに包みました。)には、まーた、こんなこと書いて...とKANさんに恋する身としてはちょっと居たたまれなくなってしまう。

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 『ひざまくら~うれしい こりゃいい やわらかい~』という曲がある。私は歌詞集で先に詩として読んだ、...というか読んでない。タイトルとちょっと読みかけて、やめた。ところが、昨日『MAN』というアルバム(1996年5月27日発売)を聴いていると、ふんわりとした、思わず横揺れを始めてしまう曲が流れてきた。横揺れしながら、よくよく耳を澄ませると、「酔っぱらった~ああ~ああ~」と聞こえてきた。もしや、と思い曲のタイトルを見ると、『ひざまくら...』とあって、あああ!となった。『ひざまくら...』は、そう、KANさんに恋する身としては、ちょっとどうしていいか分からない方の詩(とタイトル)なのである。が、こんなメロディと表現力でもって唄われてしまったら、うっとりしないでいられるわけない。

 そこでまたKANさんの、というか音楽自体のすばらしさというものを感じた。そんな直視(直聞?)できないと思っていた歌詞を聴きたいとさえ思わせてしまうのだから。

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 『8 days A week』という曲は、タイトルから、まさにThe Beatlesの『EIGHT DAYS A WEEK』みたいに、私はてっきり、his baeのことを唄ってるのだと思っていた、ら、解説に、この曲は唯一のファンソングで、君=ファンの人のことである、と書いてあった。さらっと、書いてあった。

 

 物足りなそうに君が笑う

 これでいいんじゃないのとぼくだって笑う

 とにかく君はいまぼくといる

 それも、1、2、3、4、5、6、7、8 days A week

 それで ええ days A week

 (『8 days A week』by KAN、歌詞の一部を抜粋)

 

 この曲を聴いて悶絶しないファンはいないと思う。 ファンとして、冥利に尽きるとはこのことだ。とにかく、まだファン歴1か月だけど、ファンでよかった~と思った。話は横道に何度も逸れたけど、歌詞集おすすめです❤

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